ウクライナ国防省情報総局(HUR)は9日、ウクライナの前線から約590km離れたロシア南部アフトゥビンスクの飛行場を8日に攻撃した。
ロシア空軍のSu-57ステルス戦闘機を2機損傷させたと主張した。(
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この発表が事実とすればロシア軍の航空戦力にとって衝撃的と言えるほどの打撃になる。
米国のF-22ステルス戦闘機に対抗して開発された双発のSu-57超音速機を、ロシア空軍は25機前後しか保有していない。
これまでSu-57は実戦での使用が確認されておらず、実力はまだ証明されていない。
ウクライナがドローンを用いたとみられる今回の攻撃でSu-57を破壊したとすれば、ロシアに屈辱的であり、今後も屈辱的な事態が続くことの前可能性もある。
また、HURの主張どおりロシア空軍のステルス戦闘機がウクライナの前線から600km近く離れた場所で駐機中に被弾したとすれば、ウクライナ側が激化させているドローン攻撃によってロシアの防空網が薄くなり、遠くに配置しても貴重な資産が全部は守りきれなくなっていることが強く示唆される。
さらに、8日にはウクライナの別のドローンが、国境から約730km離れたロシア南部モズドクの航空基地へも攻撃したという。
こちらはロシア空軍のTu-22M爆撃機を狙った攻撃という。
HURは攻撃前後を写したものとする衛星画像を公開し、画像からは「7日時点ではSu-57は無傷だったが、8日には爆発によるクレーターと火災による特徴的な焼け跡が付近にできていること」が確認できたという。
ただ、画像は粗く、加工されている可能性もあるり情報工作されて戦果の誇張や情報撹乱の可能性も高い。
戦時の情報工作は常にあるものであり、戦意を意図的にくじく狙いもある。
ウクライナ国防省は、拡大後2年4カ月目に入る戦争でロシア軍の固定翼機350機超に損害を与えたと主張した。
しかし、ロシア等独立系アナリストによって確認されている損害は110機あまりにとどまるが、これも事実かどうかは不明だ。
HURの主張を支持する最良の材料は、ロシアの著名な軍事ブロガー
Fighterbomber
が通信アプリのテレグラムで「Su-57が炸裂破片で損傷した」と述べたことを意識すべきかもしれない。
ウクライナ側の言うとおりSu-57が修理も不可能な損傷であったとすれば、ステルス機の戦闘での損失は、世界初のステルス機である米空軍のF-117攻撃機が配備されて以来、約40年の歴史で世界2例目という事例になる。
最初の損失は1999年、コソボ紛争に介入した北大西洋条約機構(NATO)軍で支援任務にあたっていたF-117を、セルビア軍の創意ある防空部隊が飛行経路を予測して撃墜したもので、墜落時にパイロットは脱出している。
Su-57が今回は被弾していなかったとしても、ウクライナは近い将来それを達成できる可能性もある。
ウクライナは
新たな長距離攻撃ドローン
により、ロシアが増える一方の攻撃対象候補を守るため
防空システム
を追加配備するのよりも早く製造している。
ロシアは経済制裁に伴う半導体など電子部品が手元に入らず、すべての司令部や工場、製油所、航空基地などを守るためのレーダーや地対空ミサイルシステムの数が充足できず、修理等も制限されたうえ、あまりに少ないので、難しい選択が迫られている。
オーストラリア陸軍退役少将のミック・ライアンは、ウクライナのドローン攻撃によって「ロシアは防空リソースの再評価を強いられている」と指摘した。
そうした再評価の結果、Su-57はウクライナ側がドローンで狙えるほど長い時間、無防備な状態に置かれてい可能性もある。
このほかのロシア軍が手元にあるステルス戦闘機や高価な兵器もまた、同じようにドローン攻撃の危険にさらされているとの指摘も出ており、効率的破壊し無力化するためには、軍事衛星等を駆使したうえロシアの最新兵器の所在を確認する探査能力が軍事的勝利には必要不可欠となっている。