ルパート・マードック(Rupert Murdoch)
1931年3月11日ー
メディア・コングロマリットのニューズ・コーポレーションを立ち上げ、世界的なメディア王として知られる。
1931年3月11日ー
メディア・コングロマリットのニューズ・コーポレーションを立ち上げ、世界的なメディア王として知られる。
ニューズ・コープとフォックス・コーポレーションの株主、共同会長という立場でテレビや新聞、映画、雑誌、音楽産業、インターネットなどを中心とした世界に散らばるメディア企業を率いている。
米国に移住するまでは長年オーストラリアを拠点として活動していた。
1985年に米国で
フォックス放送
を創設した際に連邦通信規則との関係で米国籍でなければ会社を設立できないことから米国に帰化した。
2023年9月、11月を以ってFOX社とニューズ社の会長から退き、ニューズ社の名誉会長に就任すると発表された。
オーストラリアのビクトリア州メルボルンで生まれた。
ジャーナリストであった父の
キース・マードック (Sir Keith Murdoch)
はオーストラリアの名門社会の一員で、第一次世界大戦において従軍記者として活躍した。
当時のオーストラリア首相
ビリー・ヒューズ
の個人的なアドバイザーでもあった。
その後、メルボルンの新聞「ザ・ヘラルド」などを所有し、オーストラリア一政治的影響力の強い新聞社社長・メディア経営者となった。
キースは1928年にエリザベス・ジョイ・グリーン(後のエリザベス・マードック (Elisabeth Murdoch) と結婚し、息子ルパートと三人の姉妹をもうけた。
キースはルパートの少年時代の不出来さに不満を持っており、息子が自分のあとを継ぐことを絶望視していたといわれる。
ルパートはキースに反抗的な態度が多く見られたという。
なお、母エリザベスは103歳まで生き、生涯ルパートに強い影響力を持った。
メルボルン郊外のジーロングにある名門校
ジーロング・グラマー・スクール (Geelong Grammar School)
で学び、オックスフォード大学のウースター・カレッジ (Worcester College) へ進学した。
大学では学生新聞「チャーウェル(Cherwell)」で広告を販売していた。
1952年、父キースの急死(享年67歳)によりルパートは学業半ばでオーストラリアに戻った。
父の跡を継いでメディアグループのオーナーになろうとした。
しかし、過酷とも言える相続税を払った後にはザ・ヘラルドなどの主要な事業は手元には残っておらず、アデレードの新聞
「ザ・ニューズ (The News) 」
などがかろうじてルパートの手元に残っただけだ。
ザ・ニューズの社長となったルパートは、アデレード近くで起きた少女殺人事件で逮捕されたアボリジニの
マックス・スチュワート (Max Stuart)
の冤罪と死刑反対を主張し大キャンペーンを行った。
この結果スチュワートは冤罪が認められ釈放され、ルパートは大いに名を上げた。
このキャンペーンの実際の功労者は編集長のローハン・リヴェットであった。
マードックはザ・ニューズ紙をもとに持株会社
ニューズ・リミテッド
を創立し、オーストラリア各地の新聞を買収して1970年代にはオーストラリア有数のメディア・グループへと成長させた。
1964年にはオーストラリア初の全国紙「ジ・オーストラリアン」を発行し、政治的影響力も高めた。
また、1969年にはロンドンのザ・サンを買収して毎号カラーのヌード写真を掲載するなど一部の顰蹙を買ったものの労働者階級の人気を得ることに成功し販売数を伸ばした。
1970年代には同じく英国のデイリー・ミラーをはじめとする新聞・出版社・テレビ局などからなるメディア帝国を経営した
ロバート・マクスウェル
と激しく争いながら英米各地の新聞を次々買収し、1979年に
ニューズ・コーポレーション
を設立した。
1980年代にはイギリスの名門紙タイムズ、米国の映画会社20世紀フォックスの買収を行った。
また、米国でのテレビ・ネットワーク
フォックス放送
の設立など事業を拡大し、その経済力・政治的影響力は世界規模に拡大した。
1987年にはかつて父が所有し本拠としていた
ヘラルド・アンド・ウィークリー・タイムズ
(The Herald and Weekly Times Ltd)
の買収に成功し、父のメディア王国を取り戻した。
2005年には当時世界最大のSNS・MySpaceを買収した。
2007年、ウォールストリート・ジャーナルの発行元であるダウ・ジョーンズを傘下に収めている。
2011年7月、「ニュース・オブ・ザ・ワールド」の
電話盗聴事件
に絡み、ニューズコーポレーションCEOとしてイギリス下院の調査委員会に召喚された。
2012年7月22日、ニューズ・インターナショナルは、マードックが傘下の英有力紙の経営陣から退いたことを明らかにした。
2013年6月28日、ニューズ・コーポレーションがエンターテインメント分野を主に担う
21世紀フォックス
と出版分野を主に担う新しい
ニューズ・コープ
に分社化された。両社の最高経営責任者(21世紀フォックスでは会長も兼務)を引き続き務めた。
2019年3月20日、ウォルト・ディズニー・カンパニーが21世紀フォックスの大部分を買収した。
ただ、ディズニーは既に放送ネットワークであるABCを所持しており寡占が懸念された。
その対応として、フォックス放送とその関連事業は新会社が運営する事となった。
同日フォックス・コーポレーションが営業を開始し、マードックはその会長を務めた。
2023年9月21日、同年11月にフォックス・コーポレーション並びにニューズ・コーポレーションの会長職を退任した。
また、ニューズ・コープの名誉会長に就くことを発表した。
なお、後任は自身の長男であるラクラン・マードックが就任した。
マードックの政治的立場は1970年代半ばまでは、マードックのグループ各紙は左派の
オーストラリア労働党
イギリス労働党
の支持だったが、その後は右派であるオーストラリア自由党やイギリス保守党支持に転向している。
マードックは「リベラルどもを潰そう」とも発言するようにもなった。
一般的に傘下の21世紀フォックスなどが親米・親イスラエルなどの姿勢をとり、ロナルド・レーガンやマーガレット・サッチャー、ジョージ・ウォーカー・ブッシュ、デービッド・キャメロンといった新保守主義・新自由主義の政治家を支持してきた。
マードック本人も保守主義者であるとされるものの反王制であることでも有名で、特にイギリス王室に対する報道は激烈である。
こうした事業拡大では日和見とも言える態度がしばしば批判の対象となっているがマードック本人は、自身の政治的立場を「リバタリアニズムの信奉者」だと述べている。