オピオイド危機とは、1990年代後半から現在に至るまで、依存性や中毒性のある
麻薬物質「オピオイド」
を含有する処方鎮痛剤の使用により
全米で50万人以上
が亡くなっている社会問題(過剰摂取問題)のこと。(関連情報)
アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)によると、オピオイドの過剰摂取による死亡者は、2004 年に 9,091 人だったのが、10 年後の 2014年にはその 3 倍以上の 28,647 人になった、
さらにその数は、2016年には 42,000 人以上と増加した。
2017年10月に米国の保健福祉省(HHS)は、オピオイド問題について
と位置付けることを宣言した。
そもそも、オピオイドとは、ケシの実から生成される麻薬性鎮痛薬やそれと同様の作用を示す合成鎮痛薬の総称。
麻薬性鎮痛剤の中でも、ケシの実から採取される
麻薬性鎮痛剤の中でも、ケシの実から採取される
アヘン
から生成されるモルヒネは日本でも広く知られている。
また、半化学合成物(semi-synthetic opioids)には、オキシコドンというものもあり、モルヒネと比べると約 1.5 倍の鎮痛作用がある。
合成化合物(synthetic opioids)にはフェンタニルなどがある。フェンタニルはモルヒネの 50〜100 倍の鎮痛効果をもたらす。
なお、日米両国で手術中に使用したり処方したりすることが認められており、中度から重度の痛みに対する鎮痛剤として処方される。
オピオイドの効果は痛みを緩和する以外に、摂取することで脳内の喜びをコントロールする箇所が刺激され、一時的に幸福感を感じるため、多量に摂取すると常習性が生じ、一度に過剰に摂取すると死に至る恐れがある。(アメリカでは、2015年には処方薬が原因となり 22,598 人が死亡している)。
また、オピオイドの中には、モルヒネを原料とするヘロインも含まれ、その危険性から日米両国で非合法の麻薬とされている。
オピオイド問題が深刻になってきた背景には、処方された鎮痛剤が「ゲートウェイドラッグ」になっていることだ。
また、オピオイドの中には、モルヒネを原料とするヘロインも含まれ、その危険性から日米両国で非合法の麻薬とされている。
オピオイド問題が深刻になってきた背景には、処方された鎮痛剤が「ゲートウェイドラッグ」になっていることだ。
合法的に処方された鎮痛剤の継続的な摂取によって常習性を生み出してしまい、その結果非合法な方法でオピオイドを入手したり、ヘロインのような非合法な薬物に手を染めたりしてしまう、ということだ。
米国社会での蔓延の背景として、製薬会社や医療機関側の要因が指摘されている。
1995年にパデュー・ファーマ社がオキシコンチンを常習性が低く安全な鎮痛剤として積極的に広報・販売し始めたことで、多くの医師
が同薬を処方するようになり、依存症になる人々が徐々に増加していった。
連邦政府は 2007 年になって、オキシコンチンについて誤った宣伝を行ったという内容で、パデュー・ファーマ社に対し訴訟を起こした。
が同薬を処方するようになり、依存症になる人々が徐々に増加していった。
連邦政府は 2007 年になって、オキシコンチンについて誤った宣伝を行ったという内容で、パデュー・ファーマ社に対し訴訟を起こした。
同社と幹部 3 人は過失を認め
約 6.3 億ドルの賠償金
の支払いを命じられた。
しかし、米国ではオキシコンチンを「ゲートウェイドラッグ」とする薬物依存症の蔓延は止まらなかった。
オキシコンチン依存症になった人々は、より安価なヘロインや最近は特に少量で劇的な効果があるフェンタニルを不法に入手するようになり、大きな問題になっている。(関連情報)