ロシアがウクライナ経由で欧州に
天然ガスを輸出するパイプライン
が2024年12月末で停止する見通しとなった。
ロシアのウクライナ侵略が長期化する中、ウクライナが
契約更新を拒否する方針
を決めた。
供給ルートの遮断により、パイプラインから船舶等による流通になれば、運搬費用の上昇が起きるため、需要の逼迫が進む玉突きが起きそうだ。
こうした流通コストや量的な制限が起きることで25年1月以降に欧州のガス価格が上昇する懸念が出ている。
プーチン大統領は26日の記者会見で「ウクライナが契約を延長しないと言っている。3、4日で契約を結ぶのは不可能だ」と主張、欧州のガス価格が上がるとの見通しを示した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日のブリュッセルでの記者会見で
ロシア産ガス
の輸送契約を延長しない方針を改めて示した。
ウクライナへの侵略を続けるロシアの収益源であるガスの輸出に打撃を与える考えを示唆していた。
ウクライナ経由の天然ガス輸送について、ロシアとウクライナは19年12月に5年間の契約延長を決めたが期限切れが迫りつつある。
22年2月のロシアのウクライナ侵略開始後、
対ロ制裁
を科す欧州連合(EU)のロシア産ガスへの依存度は低下してきている。
ただ、加盟国であるスロバキアやハンガリーなどはウクライナ経由のパイプラインでロシアからのガス輸入を続けてきた経緯があり、各国間での対応に差が出てくることになる。
ロシアのノワク副首相によると、23年のウクライナ経由のガス輸出は
年間約150億立方メートル
だった。
これはロシアのガス輸出シェアの約15%を占めている。
ロシアからEU方面に延びるガスパイプラインにはノルドストリーム、ベラルーシ経由、ウクライナ経由、トルコストリームといったパイプラインがある。
EUの経済制裁に反発したロシアがノルドストリームを通じたガス供給を22年8月に完全に遮断した、
このほか、ベラルーシ経由のパイプラインも同年に停止した。
ウクライナ経由の輸送停止で、残るのは実質的にトルコストリームのみとなる。
今回の契約延長拒否でウクライナはロシア産ガスの
通過料収入
を失うことになる。
ロシア紙ベドモスチによると、ウクライナが受け取る通過料収入は年間12億ドル(約1880億円)超とみられる。
それでも侵略を続けるロシアとのつながりを断つ方針を示した。
ウクライナ経由のパイプライン停止でロシア寄りの姿勢をとる
ハンガリー
スロバキア
はロシア産ガスについて他の調達ルートを確保るる必要が出てきた。
なお、ハンガリーはトルコストリーム経由でのロシア産ガスの輸入を続ける考えを示している。
スロバキアのフィツォ首相は22日にモスクワを訪問してプーチン氏と会談し、ガス供給について協議した。
プーチン氏は9月にウクライナが契約更新を拒否した際の代替ルートとして「トルコストリーム経由などで供給できる」との考えを示していた。
なお、一部のEU加盟国への天然ガス供給を続ける一方で、今後ガス価格が上昇すれば
ウクライナへの批判
を一段と強めるとみられ、EUの分断を目論んだくさびを打ち込む狙いが透けて見える。