ウェスティーズ（Westies）ニューヨーク市を拠点とするアイルランド系アメリカ人の組織犯罪グループ

ウェスティーズ（Westies）ニューヨーク市を拠点とするアイルランド系アメリカ人の組織犯罪グループのこと。

　恐喝、麻薬密売、そして殺人請負を行って犯罪ビジネスを行っていた。

　彼らはイタリア系アメリカ人マフィアと提携し、マンハッタンのヘルズ・キッチン地区を拠点として活動した。

　犯罪作家の

　　　T・J・イングリッシュ

によると、「ウェスティーズのメンバーは、その時々の刑務所の出所者によって12人から20人程度にとどまっており、

　　　アイリッシュ・マフィア発祥の地

における最後の世代のアイルランド人と同義語になった」と述べている。

　ニューヨーク市警察組織犯罪対策班とFBIによると、ウェスティーズは1968年から1986年の間に60件から100件の殺人事件に関与していたという。

　また、トム・デヴァニーとドミニク・モンティリオが所属していた

　　　国際機械・航空宇宙労働組合

　　　板金労働者国際組合

を除けば、労働組合への影響力もほとんど持っていなかった。

　活動期間：1960年代半ば〜1988年
　活動地域：マンハッタンおよびニュージャージー州[2]
　民族　アイルランド系アメリカ人
　会員数（推定）　会員15名、協力者100名
　活動内容

　　組織犯罪、強盗、誘拐、違法賭博、詐欺、恐喝、麻薬密売、偽造、強盗、暴行、殺人
　◯同盟　ガンビーノ一家
　◯敵対勢力

　　　ミッキー・スピレインのギャング

　　　

　1960年代初頭、ミッキー・スピレーンは、1950年代初頭にギャングのリーダーたちが訴追を逃れるためにこの地域から逃亡した。

　それ以来、ヘルズ・キッチンに存在していた権力の空白となった。

　クイーンズ出身のギャング

　　　ヒューイ・マリガン

が実質的にヘルズ・キッチンを仕切っていた。

　地元出身のスピレーンは、リーダーに就任するまでマリガンの弟子として活動していた。

　スピレーンは、入院中の近隣住民に花を贈り、感謝祭には困窮家庭に七面鳥を配っている。

　さらに、ブックメーカーや保険といったギャンブル事業も経営していたが、同時に高利貸しも行っていた。

　高利貸しは暴行につながり、スピレーンは窃盗罪で逮捕されたこともあった。

　しかし、彼のあらゆる犯罪行為の中で最も大胆だったのは、

　　　「スナッチ」

と呼ばれる「地元のビジネスマンや他の犯罪組織の構成員を誘拐し、身代金を要求す強盗」であった。
　彼は、1905年から

　　　ミッドタウン・デモクラット・クラブ

を経営していた名門マクマナス家の娘

　　　モーリーン・マクマナス

と結婚することで、地域での知名度を高めることに成功した。

　政治権力と犯罪活動の融合により、ギャングは組合の仕事や労働組合の組織化を強力にコントロールするようになった。

　衰退するウォーターフロントから離れ、ニューヨーク・コロシアム、マディソン・スクエア・ガーデン、そして後に

　　　ジェイコブ・K・ジャビッツ・コンベンションセンター

といった建設業やサービス業へと勢力を拡大していった。
　1970年代、ジェノベーゼ一家が間もなく建設されるジェイコブ・K・ジャビッツ・コンベンションセンターの支配権を狙う中、アイルランド系マフィアは

　　　イタリア系マフィアの脅威

が増大していると感じていた。

　コンベンションセンターはスピレーンの縄張りであるヘルズ・キッチン地区に位置していた。

　このため、スピレーンはイタリア系マフィアのいかなる関与も認めなかった。

　イタリア系ギャングはアイルランド系ギャングをはるかに上回る数であった。

　ただ、ススピレーンはコンベンションセンターとヘルズ・キッチンの支配を維持することに成功した。

　苛立ちと恥辱を感じたイタリア系ギャングは、アイルランド系アメリカ人の殺し屋

　　　ジョセフ・「マッド・ドッグ」・サリバン

を雇い、スピレーンの腹心である

　　　トム・デヴァニー

　　　エディ・「ザ・ブッチャー」・カミスキー

　　　トム・「ザ・グリーク」・カパトス

の3人を暗殺させた。
　その後、1977年、スピレーンは

　　　ロイ・デメオ

に暗殺された。

　これは、スピレーンの後継者を狙っていた

　　　ジミー・クーナン

が仕掛けた暗殺だった。

　クーナンは、悪名高きデメオと取引を交わし、デメオを仲間に引き入れた。

　スピレーンを抹殺することで、デメオの仲間は後継者と取引することになった。

　デメオがクーナンと初めて接触したのは、クーナンが高利貸しの

　　　ルビー・スタイン

を殺害し、遺体をバラバラにした後のことだ。

　「スピレーン・クーナン戦争」は、18歳のクーナンがスピレーンに父親を誘拐され、ピストルで殴り殺されたことへの復讐を誓ったことから始まった。

　1966年、クーナンはヘルズ・キッチンの集合住宅の屋上から、スピレーンとその仲間に向けて機関銃を発砲した。

　クーナンは誰にも怪我を負わせなかったものの、スピレーンはこの若いチンピラを侮ってはならないと理解していた。

　スピレーンはクーナンの父親のもとへ行き、彼を平手打ちし、息子を落ち着かせるよう命じた。

　クーナンは殺人と誘拐の罪で短期間投獄されたものの、いずれもC級過失致死罪に減刑された。

　1971年後半に釈放され、

　　　ウェストサイド・ギャング

との抗争を続けた。

　ヘルズ・キッチンはもはやスピレーンとその家族にとって安全な場所ではなく、彼はクイーンズの当時アイルランド系労働者階級の居住区であったウッドサイドに移った。

　スピレーンがいなくなると、ヘルズ・キッチンにおける彼の組織支配力は弱まり始めた。

　クーナンがこの地区のボスになったが、一部の人々は依然としてスピレーンをボスと見なしていた。

　ニューヨーク委員会では、スピレーンは依然として西側におけるアイルランド系マフィアのボスとみなされており、ジャビッツ・コンベンション・センターの建設現場を彼の支配下に置いていた。

　ジェノベーゼ一家の幹部

　　　アンソニー・サレルノ

はセンターを自分のものにしたかったので、ジミー・クーナンと合意に達した。

　クーナンがボスになれば、サレルノは建設現場を運営し、クーナンに収益の一部を分配することになった。
　サレルノは

　　　バッファロー・クライム・ファミリー

の仲間でフリーランスの殺し屋である

　　　ジョセフ・サリバン

に連絡を取り、ヘルズ・キッチンにおけるスピレーンの主要支持者である

　　　トム・デヴァニー

　　　トム・カパトス

　　　エドワード・カミスキー

の3人を排除するよう指示した。

　カミスキーは、親友を殺害したとして

　　　パトリック・「パディ」・デュガン

を殺害し遺体をバラバラにした後、クーナン陣営に寝返ったとみられていた。

　しかし、サレルノとサリバンはこの寝返りを知らなかった。

　デヴァニーとカミスキーは1976年後半に殺害され、た。

　カパトスは1977年1月に殺害された。

　スピレーンは影を潜めていき、クーナンがヘルズ・キッチンの絶対的なボスとなっていたが、スピレーンは依然として死ななければならないと考えられていた。

　ガンビーノ・ファミリーの兵士ロイ・デメオは、クーナンに便宜を図ってスピレーンを殺害した。

　ミッキー・フェザーストーンは殺人罪で裁判にかけられたが、無罪となった。

　1970年代後半、クーナンはウェスティーズと、当時

　　　ポール・カステラーノ

が率いていたガンビーノズとの同盟関係を強化した。

　クーナンの主な連絡役はロイ・デメオが窓口となった。

　1979年、クーナンとフェザーストーンは共にバーテンダーの

　　　ハロルド・ホワイトヘッド殺害容疑

では無罪判決を受けている。

　もう一人のウェスティーズ（そして最高執行責任者）である

　　　ジェームズ・マックエルロイ

は、1980年にチームスターズの殺人容疑で無罪判決を受けた。
　1980年、ウェスティーズのリーダーであるクーナンは銃所持の罪で、フェザーストーンは連邦法違反の罪で投獄された。

　ただ、賭博、高利貸し、組合による恐喝はウエストサイドで続いた。

　デメオ自身が殺害された後、クーナンのガンビーノとの繋がりはブルックリン出身のカポ

　　　ダニエル・マリノ

が務めるようになった。

　クーナンは最終的に

　　　ジョン・ゴッティ

と直接交渉するようになった。

　ゴッティは1985年12月のカステラーノ殺害後、ガンビーノを掌握した。

　ゴッティは

　　　ジョー・ワッツ

をウェスティーズとの連絡係に任命した。

　ウェスティーズは時折、ガンビーノの殺し屋部隊として働くこともあった。

　フェザーストーンは1986年初頭に殺人罪で有罪判決を受け、ウェスティーズの他のメンバーが自分に殺人の罪を着せたと信じたことから、有罪判決の覆りを願って政府に協力し始めた。

　クーナンと妻のシシーが提供した情報、そして彼らが協力して作成した録音によって、この目的は達成された。

　1986年9月、フェザーストーンの有罪判決を担当した検察官は、裁判長に対し、有罪判決後の捜査でフェザーストーンは無実であることが明らかになったと伝えた。

　裁判官は判決を覆した。

　この時点で、フェザーストーン夫妻が提供した情報に基づき、クーナンと他のウェスティ数名が殺人などの罪で州法に基づき逮捕された。
　その後まもなく、連邦検察官

　　　ルドルフ・ジュリアーニ

は、クーナンらに対し、

　　　20年前の犯罪行為

を理由に、RICO法に基づく痛烈な起訴状を送付した。

　フェザーストーンは1987年9月に始まり、1988年に重大な有罪判決で終結したこの裁判で、4週間にわたり公開法廷で証言を行った。

　クーナンは様々な罪状で懲役60年の判決を受けた。

　他のギャング幹部も長期の懲役刑を言い渡され、その中には

　　　マクエルロイ（懲役60年）

や、常習犯の

　　　リチャード・「マグジー」・リッター（高利貸しと麻薬関連の罪で懲役40年）

も含まれていた。

　1990年代初頭までに、ヘルズ・キッチン地区の古い人口構成は消滅しつつあった。

　ブルーカラーのアイルランド系アメリカ人コミュニティは、より裕福で民族的に多様な住民層に取って代わられつつあった。

　この変化に伴い、街頭犯罪は減少し、指導者も交代した。

　アメリカ系セルビア人の民族主義者でかつては反共産主義者

　　　ボスコ・ラドニッチ

は、1983年に

　　　ジミー・クーナン

の下級仲間としてウェスティーズに加わった。

　ケリーが逃亡した後、彼はウェスティーズのボスとなり、1986年のジョン・ゴッティの恐喝裁判の「八百長」に重要な役割を果たした。

　1992年頃、ラドニッチは陪審員の不正操作容疑を逃れるため国外に逃亡した。

　1999年、フロリダ州マイアミに立ち寄った際に

　　　米国税関職員

によって逮捕された。

　ただ、事件の主要証人であるサミー・グラヴァーノが信頼できないと判断されたため、ラドニッチは釈放された。

　ラドニッチは故郷のセルビアに戻り、カジノとナイトクラブを経営していた。

　2011年に健康状態が悪化し亡くなった。

　1992年、ブライアン・ベントレーという男がウェスティーズのメンバーであることが判明した。

　マンハッタン全域で1,000以上の店舗を襲った窃盗団への関与が疑われた。

　地方検事局捜査部長の

　　　マイケル・G・チェルカスキー

は、ウェスティーズのメンバーがまだどれだけ残っているかと問われると、「たくさん残っている」と答え、「ギャング団はこれで終わりではない」と答えた。

　「ユーゴ時代」終焉後、ほぼ20年間、ウェスティーズの活動や存続についてはほとんど言及されていない。

　しかし2012年、ニューヨーク・ポスト紙は、

　　　ジョン・ボクン

が率いるウェスティーズが再浮上したと報じた。

　ボクンは共犯者と共にマリファナを米国に密輸したとして逮捕された。

　ニューヨーク・タイムズ紙は、ボクンが元ウェスティーズの甥である以外、その名称を使用するいかなるグループとも一切関係がないと指摘している。

　なお、「ウェスティーズ」は1980年代半ばにマスコミ関係者がギャングを指すために作った呼称であり、イングリッシュが指摘するように、「ウェスティーズ」のメンバーがこの呼称を採用したり、自らをそう呼んだりしたことは一度もない。

◯元メンバーおよび関係者
　・ウィリアム・「ビリー」・ビーティー（William "Billy" Beattie）
　・ウィリアム・「インディアン・ビリー」・ボクン（William "Indian Billy" Bokun）

　　　ボクンは1988年2月24日、ウェスティーズRICO法裁判で恐喝罪で有罪判決を受けた。

　　　 彼は2001年3月6日に釈放された。
　・トーマス・「トミー」・コリンズ（Thomas "Tommy" Collins）
　・ジェームズ・「ジミーC」・クーナン（James "Jimmy C" Coonan）
　・ジョン・「ジャッキー」・クーナン（John "Jackie" Coonan）
　・エドワード・「エディ・ザ・ブッチャー」・カミスキー（Edward "Eddie the Butcher" Cummiskey）
　・パトリック・「パディ」・デュガン（Patrick "Paddy" Dugan）
　・フランシス・「ミッキー」・フェザーストーン（Francis "Mickey" Featherstone）
　・エドワード・「ダニー」・グリロ（Edward "Danny" Grillo）
　・トーマス・「トミー」・ヘス（Thomas "Tommy" Hess）

　・ジョン・ヘイロー（John Halo）
　・ケビン・ケリー（Kevin Kelly）
　・アントン・「トニー」・ルシッチ （Anton "Tony" Lucich）

　　　ルシッチは高利貸し兼ブックメーカーだった。

　　　1976年の暴行裁判でクーナンに有利な証言をしながら

　　　　　ジミー・クーナン

　　　を知らないと虚偽の主張をした。

　　　1980年7月に偽証罪で10ヶ月の懲役刑を宣告された。

　　　ルシッチは恐喝罪を認め、1987年から88年にかけて行われた

　　　　　ウェスティーズRICO裁判

　　　で他の8人の被告に証言した後、証人保護プログラムに参加した。
　・ジェームズ・「ジミー・マック」・マクエルロイ（James "Jimmy Mac" McElroy）
　・ボスコ・「ザ・ユーゴ」・ラドニッチ（Boško "the Yugo" Radonjić）
　・リチャード・「マグジー」・リッター（Richard "Muggsy" Ritter）
　・リチャード・「リッチー」・ライアン（Richard "Richie" Ryan）
　・ケネス・「ケニー」・シャノン（Kenneth "Kenny" Shannon）